子どもは新学期、ママやパパは新年度を迎えて、やっと少し落ち着いてきたころでしょうか?この時期に、ママパパ編集部に寄せられるのが、「子どもの忘れ物が多くて困っています!」や「職場復帰したのですが、つい忘れ物や失くしものをしてしまいます」といった「忘れ物」をキーワードにした質問です。編集長である私も忘れ物とは無縁ではありませんが・・・(笑) 長年、忘れ物で困っている子どもやおとなの心理カウンセリングをしている公認心理師・臨床心理士の吉田直樹先生に聞いてみました。皆さん、参考にしてくださいね。
小学校4年生の長男が、忘れ物が多くて困っています。でも、私も子どもの頃は忘れ物をしてよく怒られていたので・・・性格だからしょうがないのでしょうか?
長年、心理学では記憶についての研究がおこなわれ、エビングハウスの「忘却曲線」は代表的なものです。「忘れる」ということは誰にでも起こることです。ただ、「忘れ物」によって子どもが自信を失って自己肯定感が低くなり本来の能力を発揮できなかったり、おとなでも「忘れ物」を気にするばかりにこころが疲れてしまって病気になったりとなると「しょうがない」では済まされません。また、子どもの頃は忘れ物が多かったけど、おとなになるにしたがって少なくなることもあります。これは、「忘れ物」を繰り返すことで自分の理解が徐々に進み、「忘れ物をしない」ための工夫がしだいにできるようになるので、結果的に「忘れ物が減少する」のです。やはり、健康なメンタルを保つためには、早期に、自分自身の忘れ物のタイプを把握して、対処方法やスキルを身につけることが子どもにもおとなにも大切でしょう。
6年生になるのですが、学期が変わると忘れ物が増えます。特に新学期はひどいのですが、女の子の特徴なのでしょうか?
男女差ではなく、環境が原因かもしれません。担任の先生やクラスメイトがかわったり、宿題の出し方や連絡帳の書き方の変化など、環境の変化により「忘れ物」が増えることがあります。特に新学期は、教科書、ノートなど学用品も新しくなり、子ども部屋が片付いていないと、「忘れ物」が起きやすい状況が整ってしまうのです。また、学期の初めは、学校がバタバタしていたり、運動会などの行事に影響されて子どももふわふわしていると、その落ち着かなさに伴い「忘れ物」が増加していまいます。したがって、子どもの持ち物や机の周りを保護者も一緒に整理をしたり、休日は子どもをゆっくりさせることが重要になります。まずは、子どもの環境やこころを整えることで「忘れ物」を予防してみてはいかがでしょうか?
うちの次女は、「忘れ物」を探すことができません。中学生になっても、朝から「お母さん、あれどこ?」と毎日のように聞いてきます。どうしたらいいのでしょうか?
もしかしたらお子さんの「見え方」が関係しているのかもしれません。視力には問題がないにもかかわらず、視覚的に全体を捉えることが難しかったり、細かいところが把握できないことがあります。また、探しているモノのイメージができていなかったり、不完全だと「探し物」が見つからないこともあります。「習字道具がない!ない!」と子どもが叫んでいるのを例にしましょう。子どもは一心に習字道具を探しているのですが、それが子どもの視界には入りません。また、探し物のイメージが不完全だと、ピッタリ合わないと探し出せません。結果的に子どもには「ない!ない!」となってしまうのです。保護者が行ってみると当然「ほら、ここにあるじゃない」となります。そして、目の前にあるのに「なぜ探せないの?」ということになってしまうのです。このようなことが続いている場合は、まず子どもの「見え方」を確認しましょう。視野が広いのか?狭いのか?どのように見えているのか?子どもが運動をしている場面を観察したり、ノートの字や絵、片付けの仕方なども参考になるかもしれません。そして、気になるようであれば、心理の専門家に相談されることをお勧めします。「見え方」も含めた認知機能を心理検査で明らかにすることができます。
小学校2年生の男の子なのですが、落ち着きがなく、ADHD(注意欠如・多動症)と診断されています。「忘れ物」も多いのですが発達障害と関係があるのでしょうか?
発達障害のお子さんは、その特性より「忘れ物」が増えることがあります。特にADHDの場合は、注意の持続が困難だったり散漫になったりするので、どうしても「忘れ物」が多くなる傾向がみられます。そして、細部への注意が向かないためにケアレスミスや物忘れも目立ったりするのです。また、能力のアンバランスなところも影響します。特にワーキングメモリーがうまく機能しないことがあるので、保護者や先生の指示を聞いていても、聞きもらしたり、記憶が保てず忘れてしまうのです。そのために「忘れ物」が増加してしまいます。家庭では、保護者が「忘れ物」についてたびたび叱ると、子どもが自信を失ったり、何事もうまくいかないとネガティブに考えてしまい悪循環になることがあります。「忘れ物」について注意をするのではなく、どうしたら「忘れ物」を予防できるのか親子で話し合うことが大切です。そして、「忘れ物」が少しでも減ったら、親子で喜んだり、子どもをほめたりするといいでしょう。
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教えて直樹せんせ
公認心理師・臨床心理士の吉田直樹先生